お客様へ価値あるサービスを提供できる人材を育成-「リーンIT研修」

SCSKでは、2015年から主にITマネジメント事業に関わるエンジニアを対象に、トヨタ自動車のトヨタ生産方式を元に開発された「リーンIT」を学ぶ研修を開催しています。
リーンIT研修を受講したSCSKのサービスマネージャは「顧客志向」の重要性を学び、お客様に価値あるサービスを提供できる人材へと育っています。
今回は、研修を管轄するSCSKのITマネジメント事業部門 事業推進グループ 事業高度化推進室長の牧野 純也と事業高度化推進室 第二課 猪木 一成、そして、講師を担当される日本クイント株式会社 代表取締役 最上 千佳子氏にお話を伺いました。

牧野純也
長年に渡り、ITサービスマネジメントに関するコンサルティングサービスや運用サービスの提供、PMOの責任者などを歴任。社内の専門スキル認定組織(ITSM専門)にて部会長を兼任。特定非営利活動法人itSMF Japanにおいては、過去5つの分科会に参加。ITIL® Manager

猪木一成
顧客先常駐による運用サービス提供から始まり、インフラ構築、プロジェクトマネジメント、大手金融機関への出向による新規事業立ち上げまで、40年に迫る様々な立場での経験を有す。現在はその知識や経験を生かし、後進の育成施策を担当。ITIL® Expert

サービス提案型のビジネスにシフトしていく

  • 牧野純也
    SCSK株式会社
    ITマネジメント事業部門
    事業推進グループ
    事業高度化推進室長
    牧野純也
  • 猪木一成
    SCSK株式会社
    ITマネジメント事業部門
    事業推進グループ
    事業高度化推進室 第二課
    猪木一成

──ITマネジメント事業部門はどのような役割を担っているのでしょうか?

牧野:ITマネジメント事業部門は、データセンターやお客様先での運用管理やシステム管理、インフラ構築を事業の柱としています。
かつて、エンジニアの仕事は、お客様との契約に基づき、請け負った業務を粛々と対応する、といったやり方が中心でした。いわゆる、「受け身姿勢」での仕事です。しかし、時代がスピードを増して変化する中、このやり方が時代に取り残されてしまうことは明白です。そこでお客様に対して自ら積極的に提案できる人材を育成するため、事業高度化推進室が立ち上がったのです。

──事業高度化推進室が主催する人材育成はどのようなものでしょうか?

牧野:「サービスマネージャ教育」とこの「リーンIT研修」を行っています。ベースにサービスマネージャ教育、上位にリーンIT、という位置づけです。
サービスマネージャは「サービスマネージャ教育」を受講後、毎月お客様に提出している「月次報告書」の見直しを行います。お客様にとって価値ある月次報告書を作るためには、お客様との課題共有や、課題解決に向けた取り組みが重要です。
月次報告書のレベルアップ検討は、ワーキングチームで実施します。各お客様を担当するサービスマネージャが集まり、お客様に評価を頂いている取り組みを共有することで、改善のスパイラルを高めることができると考えています。
ワーキングチームの1年間の活動を経た後、さらに月次報告書の成熟度を高めるために、サービスマネージャにリーンITを受講してもらいます。このような活動を3年前から行っています。

*「サービスマネージャ」に関する説明はこちら

──研修のなかでリーンITはどのように体系づけられているのでしょうか?

牧野:我々はITサービスを提供する立場として、お客様の業務プロセスを把握し、サービスを管理することが重要です。また、管理だけでなく、PDCAを意識する必要もあります。モニタリングし、その結果に基づいた手を打っていくことが大切です。
決められたルールを守り続けるのは「当たり前」の領域でしかありません。さらに「魅力的」という領域に足を踏み入れるとき、「顧客志向」や「お客様の視点」が重要となります。
改善は一人ではできません。我々は組織全体に改善の文化を定着させたい。リーンIT研修では人や組織に注目して改善を促進してもらう、このような目的で研修を体系づけています。

──リーンITに着目した理由は?

牧野:一番は「顧客志向」であるということです。リーンITには「お客様の声を聞く」というVOC(ボイス・オブ・カスタマー)という考えがあります。お客様の課題を把握・理解するには、お客様と会話し、接することが重要になってきます。そのような意味でリーンITを採用しました。

──サービスマネージャがリーンIT研修を受けることで、お客様にとってはどのようなメリットが生まれるのでしょうか?

牧野:毎月ご提出する月次報告書の内容を充実させ、お客様に改善策を提案できるようになることが、お客様にとっての一番のメリットだと思っています。

──3年経ち、リーンITによる成果は出ていますか?

牧野:まず、サービスマネージャひとりひとりの意識の変化と、分析スキルの向上が挙げられます。
SCSKでは人事考課とは別に「専門性認定」という社内のスキル認定制度があります。これはITSSをテーラリングした職種定義ですが、サービスマネージャはスキルアップにより認定レベルを向上させることができます。サービスマネージャはスキルアップすることで、お客様ご自身が気づかれていない課題に気づくことができる。それがお客様にとってのメリットになります。
お客様が問題意識を持っていなくとも、サービスマネージャは積極的にお客様の声を聞くことで、お客様は小さなことでも相談ができるようになります。すると、そこからサービスマネージャは新しいソリューションを提案できるようになり、結果的にお客様に貢献できます。

──具体的な成功事例はありますか?

猪木:あるお客様でのことです。これまで我々は毎月の業務として「当たり前」のように月次報告書を作成し、提出しておりましたが、お客様があまり興味を示されない、ということがありました。
しかし、リーンIT研修を受けたことで、ただいつもと同じように月次報告書を出すだけでなく、お客様は何を求めているのか? という声を聞くようになり、それに応えるよう月次報告書のフォーマット・内容を変更しました。やり取りを続けていくうちに、お客様は話したことが月次報告書に反映されている、月次報告書が改善されている、ということに気づいて下さりました。結果、これまで以上にお客様とコミュニケーションが取れるようになり、好循環が生まれた、というケースがありました。
お客様を担当するシステム管理・運用管理チームについても、サービスマネージャと共にお客様への改善対策に取り組むようになり、それがお客様へとフィールドバックされる。するとお客様に喜んでいただける。お客様に喜んでいただくことが励みになり、それぞれのチームも前向きに頑張ることができる。いい形のスパイラルになりました。まさに、「お客様の声を聞く」ことで「魅力的な品質」が提案できる、良い関係性を醸成できたケースでした。

──確実に成果は出ているわけですね。

牧野:はい。前任者から引き継いだ月次報告書をこれまでと同様に作成し提出する、報告書の品質を維持し続ける、それはそれで重要なことです。しかし、それだけでは進歩はありません。それぞれの人が自分なりに工夫していくことが重要なのです。

──いい形のスパイラルが生まれているわけですね。

猪木:良い関係を築くことで、お客様の方から「ディスカッションしたい」という声が出るようにもなってきました。
月次報告というのは過去の報告です。過去の報告を人が集まって時間をかけて行うよりも、未来のことを考える方に時間をかけたい。そのためのディスカッションをしましょう、とお客様が前向きになって下さるケースもありました。
また、担当者ベースの話で終わっていたものが、SCSKからは部長が、お客様の方でも部長や役員の方に会議に出席いただいて半期の振り返りと今後の活動について討議するようになりました。

──そうなればお互いにレベルアップできますね。

猪木:そうです。そもそもサービスとは何か? という原点に戻ると、サービスはお客様に価値を提供する手段なのです。お客様が価値を感じていないのであれば、それはサービスとは言えません。今後我々は、"役務"の提供ではなく、"サービス"を提供するスタイルのビジネスにシフトしていきたいと考えています。

牧野:研修を通じ、お客様の課題を解決できる人材が育つ。お客様が気づいていない潜在的な課題も気づくことができる。それを目指しています。

リーンITを受講することで「当たり前のことが重要」と
気づくことができる

今回、SCSKへリーンITの研修プログラムを提供したのは日本クイント社です。
リーンITとはどのような研修プログラムなのか、またリーンITを学ぶことのメリットなどを、当研修で講師を務められた最上千佳子氏に伺いました。

──リーンITとはどのような研修プログラムなのでしょう?

最上氏:欧米には、トヨタ自動車のトヨタ生産方式を元に誕生した「リーン生産方式」という方法論があります。これは、"ムダを省いてビジネスで成果をあげる"という考え方ですが、これをIT業界向けに最適化したものが「リーンIT」です。そして、このリーンITを研修プログラムとして体系化したものが「リーンIT」研修です。

──どのようなメソッドなのでしょうか?

最上氏:さまざまありますが、一番重要なのは「人に力を置いている」というところです。
従来、メソッドというと、"ツールで作業を標準化しましょう"、などがIT業界では多かったのですが、それ以前に「人が協力しあう」ということや、「人としての振る舞いや態度」を重要視しています。
尚、リーンITは日本より欧米の方が人気は高く、アメリカやイギリスではリーンITを活用しての成功例などがカンファレンスで多く発表されています。

──リーンITを学ぶメリットを教えて下さい。

最上氏:リーンITは特別なことを教えているのではありません。研修を受けると「どれも当たり前のことだ」と思われるかもしれません。
例えば上司が頭ごなしに否定的な意見をいうと、部下は言い返さずに「違うんだけどな~」と心のなかで思ったりします。それは会社にとって良いことではありません。
大切なのは上司が頭ごなしに伝えるのではなく、みんなが意見を発言しやすい環境を作ることです。それって本当に当たり前のことですよね。リーンITを学ぶことで「当たり前のことが重要だ」と気づくことができます。

──SCSKでの「リーンIT」研修は年に1~2回のペースで開催され、今回で3年目となるそうですね。

最上氏:毎回、研修内容に対して参加者からフィードバックを頂き、都度プログラムを改良しています。
3年連続で呼んでいただいているというのは効果が出ている証だと考えています。とはいえ、私たちはもっと上を目指していかなければなりません。
多くの企業では研修は受けたら終わり、ということが多いのですが、SCSK様の場合はみなさんがリーンITを取り入れて、実践してくれている。そのことが目に見えるので私もとてもやりがいがあります。

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